こんにちは、新横浜ヒロクリニック訪問診療 院長 楠本です。
先日高次病院へ2024年のご挨拶の目的で退院調整のNSとお話をいたしました。
在宅診療等との連携について、現状をお聞かせいただきました。
肺がんよりも間質性肺炎が顕著に見受けられるということで、我々の医療でいうと、より高度な管理を行えるようになってきているため、そこについては期待いただけるとお伝えしました。
良いお話ができた反面、現状の在宅医療について、厳しいコメントがありました。大変な調整を行いながら、訪問診療へリレーしたのに、1週間~2週間で病院へ戻してくるといった訪問診療が多く、退院調整としても困っている。病状によっては病院としても仕方ない認識だが、在宅診療としてやりようがある状態での患者様も病院搬送で対処されると、必要な患者様に医療を提供できないと、、切実な状況をお聞きしました。これは当クリニックの話ではなく、近隣の訪問診療とのことでした。

病院勤務が長く、在宅に戻す側の立場にいたため、その実情は痛いほどよくわかります。
では、在宅医療において高次病院から退院し、その後再び病院に戻る事象が発生する場合、いくつかの可能性が考えられます。以下はその一例ですが、具体的なケースによっては他の要因も関与している可能性がありますので、あくまでこれは一般的な考え方となります。

  1. 医療ニーズの変化: 患者の状態が急変したり、在宅での医療ケアが不足している場合に、再び入院が必要となることがあります。病状が進行して治療やケアが難しくなった場合、入院が適切とされることがあります。
  2. 在宅医療の不足: 在宅医療が十分に提供されていない場合、患者や家族が必要なケアを受けることが難しくなり、再入院が必要になることがあります。在宅医療の質や量が不十分な場合、患者のニーズを満たすことが難しい可能性があります。
  3. 社会的サポートの不足: 在宅医療は患者の自宅でのケアを前提としていますが、十分な社会的サポートがない場合、患者が安心して在宅での生活を送ることが難しくなります。これが再入院の要因となることがあります。
  4. 医療連携の不備: 高次病院と在宅医療機関との連携が不十分で、情報の共有や連携が円滑でない場合、患者の状態やケアプランの変更が十分に把握されず、再入院が必要になる可能性があります。
  5. 患者教育の不足: 患者や家族が在宅医療について正しく理解していない場合、必要なケアを適切に行えない可能性があります。患者教育の不足が再入院の原因となることがあります。

このような事象が発生した場合、関係する医療プロフェッショナル、患者、家族、そして在宅医療サービスを提供する機関が連携し、問題の特定と解決に取り組むことが重要と考えます。医療チーム全体で患者中心のアプローチをとり、継続的なケアとサポートを提供することが求められます。
これも一般論となりますが、対策について考えてみます。

1. 医療ニーズの変化: モニタリングについて、関わる人たちの評価基準等、一定のレベルに持っていくまでしっかりと関与していく必要があると感じます。

  • 定期的なモニタリング: 訪問診療を通じて、患者の状態を定期的にモニタリングし、病状の変化を早期に察知することが重要です。患者の身体状態、症状、生活環境などを包括的に評価し、問題があれば即座に対応できるようにします。
  • 教育プログラム: 患者や家族に対して、自身で症状や体調の変化をモニタリングする方法を教育します。また、異常な状態に遭遇した際の報告手順や緊急時の対処法についても詳細に説明し、適切な対応ができるようにサポートします。

2. 在宅医療の不足: 患者様の経済状況等もあるかと思いますが、少しでも起こりえる可能性を想定して、人員体制は充実した状況の方が良い印象です。実際に、自分達の訪問診療先において、そう感じたこともありました。

  • 専門的なチーム構築: 在宅医療チームを構築し、医師、看護師、薬剤師、理学療法士など、各専門家が連携して医療ケアを提供します。これにより、患者の多岐にわたる医療ニーズに対応できます。
  • トレーニングとスキルアップ: 在宅医療の専門家に対して継続的なトレーニングを提供し、最新の治療法や診断技術に対応できるようにします。スキルアップと知識の向上が、在宅医療の質を向上させる鍵となります。

3. 社会的サポートの不足:ケアマネの業務についての問題や地域連携については難しいところかもしれませんが、社会的サポートが充実すると、結果的に減るのではないかと感じます。

  • 地域連携: 地域の社会資源と連携し、患者が必要とするサポートサービスを提供します。これには地域の社会福祉機関、ボランティア団体、地域包括ケアなどが含まれます。
  • ケアマネージャーの配置: ケアマネージャーが患者と家族を支援し、必要な社会的サポートを提供します。患者の日常生活のニーズに焦点を当て、適切なサービスを提供することが期待されます。

4. 医療連携の不備:DX化やICT化によって、ここはより連携が密になるような環境を作れるのではと感じております。実際に勉強会で病院側の気になる点として、在宅に戻した患者様がそのあとどうなっているのかわからないといった点も良く上がっているかと思います。

  • 電子カルテの活用: 高次病院と在宅医療機関との間で電子カルテを共有し、患者の状態や治療プランの変更がリアルタイムで把握できるようにします。これにより、連携の不備を解消し、適切な医療を提供できます。
  • ミーティングや連絡会議: 高次病院の医師と訪問診療チームとの間で、定期的なミーティングや連絡会議を実施し、情報共有を徹底化します。これにより、治療方針の変更や患者のニーズへの適切な対応が可能となります。

5. 患者教育の不足:退院調整のNSも、うちの看護師長も言っていましたが、ここは特に大事で、どの状態だったら病院への搬送が前提になるのか、を当人たちも理解しておく必要があるということを強く言っていました。それ以外にも医療チームとしての統一見解がしっかりと浸透すると良いのではないかと感じます。

  • 個別教育プラン: 患者や家族に対して、個別に適した教育プランを策定します。患者の理解度や能力に合わせ、医療状況やケアに関する情報を提供します。
  • 常時サポート: 訪問診療だけでなく、電話やオンラインを通じて患者や家族からの質問や疑問に対応し、必要なサポートを提供します。患者が日常的にケアに関する相談ができる環境を整備します。


<総括>
これらの対策を組み合わせることで、訪問診療が継続的かつ効果的に患者に提供され、再入院のリスクを低減することが期待されます。医療プロフェッショナルと連携し、患者中心のケアを実現するために、総合的なアプローチが必要なのは、まぎれもないことだと考えます。
地域包括ケアという観点から、実情として起こっている事のようにならないために、
医療技術等を研鑽し、役割をしっかり担っていきたいと考えます。