当クリニックの顧問であり、緩和ケア医の山崎章郎先生との1枚。2023年9月に当クリニック主催で、緩和ケア症例検討会および山崎先生による「がん共存療法の試み」講演会に登壇いただいた時のものです。

山崎先生との出会いのきっかけは遡ること、桜町病院での勤務医時代。現在、山崎先生はステージ4の大腸がんを患いながら、従来の抗がん剤に比べて副作用が少なく費用が高額でない、食事中心の療法を研究されています。それが、ご自身の実体験と臨床試験をもって理論化された、癌を悪化させない「がん共存療法」への取り組みです。

これまでの医療の発展経緯もあり、緩和ケアというと単癌患者に対して施すものだと思い浮かべる方もいらっしゃるかと思います。実際、勤務医時代にも癌か癌以外かで患者様の受けられるケアに差があり、ジレンマや課題意識を持つことは少なくありませんでした。

また、病の持つ痛みは時に「その人らしさ」を侵害していくことを長年の臨床経験から知っているからこそ、「あらゆる痛みや苦痛を抱える方たちの痛みを和らげたい。」「身の置き所のない状態にある方々の救いになりたい。」と強く思うようになりました。

そんな経験から、仮に「治す」ことは難しくても、出来るだけその人らしい暮らしを続けられるような「病との共存」をサポートすることに深く関心を持ち、山崎先生の病と向き合う姿勢や、ご自身が医師であり患者であるからこそ出来る取り組みに感銘を受けてきました。

そんな私が訪問診療クリニックを立ち上げ、「内科」「呼吸器科」「緩和ケア」を主軸に開始したのは、「限りある時間を患者様の望む場所・望む形で過ごすこと」と「誰もおいていかない医療」の実現を目指すためです。緩和ケアはあらゆる身体的・精神的苦しみに適応させるべきケアですし、ターミナルケアは患者様やご家族と丁寧にコミュニケーションを取りながら行うケアだと感じています。私たちは、日常性を保つことが難しい状況を経験しあらゆる感覚に敏感になることで、身体的・精神的苦痛に加え、生きることや人生の価値を問うスピリチュアルな苦しみも味わうことがあると言われています。そうした患者様お一人お一人の痛みや段階に寄り添い共感し、理解することもまた、私たちに求められている大きな役目だと考えています。

診療を通して様々な場面に立ち合ったり経験したりすることで、「普通」でいられることの「特別さ」に気づかされることが沢山あります。

新横浜ヒロクリニック訪問診療では、今後もそうした意識を基盤に持ちながら患者様ファーストの医療を目指し、日々の診療や医療連携に取り組んでまいります。